路線バスの減便・廃止で不動産の価格が下がる⁈
全国各地で、路線バスの減便や廃止、運行時間の短縮が相次いでいます。
路線バスは、電車に次ぐ国民の「足」です。路線バスの減便・廃止・運行時間の短縮は、エリアによっては通勤・通学にも影響し、生活の利便性をも揺るがします。加えて、交通利便性は不動産の価格にも大きく影響することから、バス路線地域にお住まいの方は決して無視できない問題です。
なぜ路線バスの減便・廃止が相次いでいるの?
路線バスの減便や廃止、運行時間の短縮が全国的に見られる理由は、主に人手不足によるものです。日本ではすでに人口減少が始まっており、少子高齢化も加速しています。労働人口の減少とともに、人手不足をより顕著なものにしたのは、働き方改革です。
時間外労働の上限規制が盛り込まれた働き方改革関連法は2019年に施行されていますが、2024年度からバスドライバーの時間外労働時間の上限規制基準が見直されました。2024年度から始まった労働規制は、バス業界だけでなく、運送業や建設業、医療従事者なども対象としており「2024年問題」と呼ばれています。法的にバスドライバーを拘束できる時間が減ったことで稼働できる時間が短くなり、バスの減便・廃止・運行時間の短縮につながっているのです。
バス路線地域への不動産価格への影響は?
不動産の価格を大きく左右するのは、立地です。「好立地」というのは、基本的に交通利便性の高い地域を指します。
駅まで歩けるエリアであれば歩いて何分で駅まで行けるか、バスを利用するエリアなら何分の乗車で駅まで行けるかが、価格を大きく左右します。また、バス路線地域は、バスが来る頻度や運行時間によって生活利便性が大きく異なります。そのため、バス路線の減便・廃止・運行時間の短縮は、不動産の需要や価格に大きく影響するものと考えられます。
駅までの乗車時間・運行頻度は査定に影響する
不動産会社は、交通の便や周辺環境、方角、接道、建物の劣化状況など、さまざまなことを考慮して査定額を算出します。上記は、不動産流通近代化センターの「査定マニュアル」による査定の一例を示したものです。すべての不動産会社が同じ査定マニュアルを使用しているわけではありませんが、査定方法は概ね同じです。条件に応じて評点を算出し、加算・減算して査定額を算出していきます。
駅までバスを利用しなければならないとなると、徒歩圏内の不動産より評点は下がります。そしてお察しのとおり、バスの乗車時間が長ければ長いほど、運行頻度が低ければ低いほど評点は下がります。
人口減少が進めば、街は「コンパクト化」する
人口の減少は、今後ますます進んでいくといわれています。人口減少によって引き起こされるのは、人口の分散ではなく一極集中です。国や自治体としても、広範囲にわたって人が住んでいるより、ある程度まとまって住んでもらったほうがインフラ整備や都市化にかかるコストや労力が少なくなることから、地方都市ではすでに「コンパクトシティ化」が推進されています。
コンパクトシティとは、居住誘導区域や都市機能誘導区域などを定め、人が住むエリアや商業エリアをできる限りまとめ、街をコンパクトにする取り組みです。街の中心となるのは、やはり駅です。人が減っていく場所では、バスの運行本数が減り、商業施設が減り、空き家ばかりが増え……次第に不動産価格は下落していくものと考えられます。
路線バスの減少はバス路線地域の不動産価格下落の序章
全国各地で路線バスの減便や廃止、運行時間の短縮が目立っているのは、2024年問題による影響が大きいものと考えられますが、来るべくして来た問題ともいえるでしょう。人が減れば、現行の公共交通を維持できなくなるのは当然です。
交通利便性の低下は、毎日の暮らしに大きく影響する問題です。そして、不動産の価値も下げます。人口減少や少子高齢化が進めば、バス路線地域の不動産は今後ますます下落していくおそれがあることから、こうした動きも考慮しながら住む場所や所有している不動産の売り時を検討しましょう。